一つ目の恋のはじまり
17歳のとき
一つ目の恋におぼれた。
初めての経験だった。こんなに人が眩しく思ったことは今までなかった。
赤い半袖から男の人の腕がすっと伸びていて、まだ大人になりきれていないその腕には、少し大き目の時計がまかれていた。
その人を見たとき、予感がした。
この人とこれから一緒にいるんだと瞬間的にそう思った。
それから4年ほど会うことはなかった。だけど、いつも心にその人がいて、
自分がやりたいことも進みたい道も、すべてそのたった一度しか会ったことのないその人に縛られてしまっていた。
出会いは他にももちろんあったけれど、
忘れられない人に何も伝えずして、他の人と付き合うなんてできなかった。
そして、その人に伝えることができた。
歯車はそこから動き出した。
すぐにその人と一緒に暮らすようになった。
そして、すぐにその人は精神を煩い病気で寝たきりとなってしまった。
私は別れるように言われたが、
その人をおいて去ることはできなかった。
そこから私はすべてを捨てた。
その人をもう一度明るい場所へ帰ってきてもらうために働いた。
20代すべての時間を働くこととリハビリに費やした。
両親は陰で泣いていた。
それを振り切ってもずっといたいと思った人だった。
けれど
30歳に入って私とその人に別れが訪れた。
その人は私に言った。
「おまえはもう女性としてでなく、教師のように、先生のようにしか思えなくなった。なんでも出来るようになったことは感謝している。でも、人生をやり直したいので別れてほしい」と。
それは私が崩れた初めての経験だった。
そうなんだ。
私はもう必要とされていない。
うまくやれなかったのは、私。
逃げるように別れた。
気づけばもう31歳になりかていた。普通に女性なら身体なりの変化がある年。
20代を振り返っても、私には介護のような日々とその人をとても好きだったという気持ちしか思い出せない。
どうでもいいやという投げやりな気持ちを抱えて
私はただ息をし
その人が帰ってくるのではないかと1%も望みのない希望から離れられない日々を送っていた
その3ヶ月後
その人が結婚したことを知った。
私は訳のわからない感情に
激しく泣いた。
誰かが
「自分の今は
ここへたどり着くまでに幾つもの道を選択して来たんだよ。
もしあのとき・・って思ってもそのときに選んだ道はもう一つの道より良かったから選んだはずなの。
泣いていいんだよ。今も次の道を選んでいるんだから。」
何日も泣いたら、少しずつあきらめられる私にであえた。
人生において初めての大失恋。
望んではいけない。
一つ目の恋がそこで終わった。